VOICE OF
(BOSAI) ACTION
訪日外国人

QUESTION VOICE

ブライアン

ニューヨーク在住。音楽プロデューサーとDJを生業としており、海外に行くことも多いそうで、日本にも年に3回ほどは来ている。日本の震災については知っているが、防災・避難についてはほとんど「ノーアイデア」とのこと。日本語はちょっとした日常会話がわかる程度。

ADVICE VOICE

松川杏寧 准教授

防災・災害分野の研究機構で複数のポストを歴任した後、2023年から兵庫県立大学の減災復興政策研究科で准教授を務める、防災・減災のスペシャリスト。

今年発生した能登半島地震でも、被災地で災害時要配慮者への支援活動を続けています。

自分はどんな扱いになる?

日本に行く場合は東京に滞在することがほとんど。ホテルかAirbnb(エアビーエヌビー、民泊)を利用することが多い。一度だけ、日本滞在中、ホテルにいるときに地震にあったことがある。初めての体験だった。外出中などに大きな地震にあったら、どうしたらいいかパニックになってしまうかも。

一時的に旅行で来ている外国人の方は、行政的な目線でいえば「帰宅困難者」になります。ツアーで来ている外国人旅行者の方についてはおそらくツアー会社が責任をもつことになると思うので、行政として一番見落としがちになるのは、個人で来ている方でしょう。

行政が直接個人にアプローチするのはなかなか難しいので、
そういう方にどうアプローチするのがいいのかは考えなくてはならないところです。やっぱり、訪日外国人の方にも、彼ら個人にも事前に災害というのは日本で起こりやすいこと・備えはしていたほうたいいなどは、しっかり伝えられるアプローチをなんらかの段階でとれるといいですよね。

災害があった際に、相談する窓口としては、ホテル、航空会社、それからご自身の出身地の領事館が考えられます。

アイデアですが、Airbnb・民泊なども、災害があった際の緊急連絡先など「窓口」や、相談すべき先などをその人の言語で前もって伝えておく、といった案内をどこかに事前に入れておくなどはありかと思います。

(BOSAI VOICE コメント)困っている旅行者の方がいたら、翻訳機などを使って「ホテルに戻れるかどうか」「戻れるならどんなルートがあるのか」といったことを一緒に確認する、出身地の領事館の場所を調べる・教えるなどの手助けができるかもしれません。


まず大前提として、訪日外国人の方は「どこに身を置くのか」という疑問が出ると思います。ホテルや宿泊施設にそのまま滞在できるのであればそれに越したことはありませんが、(遠出中の被災によって)ホテルに戻れない場合はあるでしょう。

近くの避難所に行けばもちろん一度受け入れてはもらえるはずですが、避難所の支援者側も「どう支援したらいいのか」という課題をもつと思います。地域内、あるいは近くの国際交流館などが外国人支援の拠点になることも多いと知っておきましょう。このあたりは、まだ行政との連動が整ってはいないですが、ここにヘルプや情報支援などの要請ができると知っておくだけでも役立つはずです。

あとは宗徒であれば、宗教施設に身を寄せる人も多いです。そこに身を寄せれば、避難中の食事*についてや、お祈りをどこでするかなどの心配事も解決されますから。

災害の備えとして、行政は、平時から地域の宗教団体・施設などのネットワークと連携をとっておくとスムーズになることは結構あるのではないかなとも考えます。災害時にどんなものが必要になるのかといったリテラシーを支援側がインプットしておく、信頼関係を築いておくことは、役立つはずです。直接支援が難しい場合には、いざというときにそのネットワークを通して間接的にさまざまな配慮が必要となる外国人の方にも、適切な配慮のうえで支援ができるようになるのではないかと考えます。

*イスラム教であればハラル、ユダヤ教徒であればコーシャーミールなど、宗徒には、その戒律に従って定められている食事・食習慣があります。食べられる食材の内容からつくりかたまで、細かい指定があることも。

自国に帰れる?

コロナの時には、旅行先で身動きがとれず、予定外に長く過ごすことになった人もいたと思います。地震などの震災にあった際に、ちゃんと帰れるのかどうかも不安になりそうです。
もし避難するとなったときにも、言葉がわからなくてもちゃんと行動できるかというと、それはかなり難しいかもしれないと考えます。

行政で避難者として支援・ケアをすると決めた場合に、どういう物資がいるのかを把握するためのコミュニケーションが必要になるでしょう。たとえば、宗徒に決められている食事や、お祈りの場所を同確保するのか。これはほかでも話した「同じような課題を抱える人同士が集まり、困りごとを共有して、解決策を考える」が当てはまる部分もあると思います。お祈りの場所も「多目的ホール」や「一時的にプライバシーが確保されるスペースを設ける」といた対応が解決できることかもしれません。

(旅行中の方に限らず)外国人避難者に対しては、やっと言語の対応がはじまり、いまようやく宗教といったところにも目が向けられはじめました。民間、NPOさんが間に入って、外国人の方を含めた避難者のいる避難所運営を補助するなどもみられます。ですが、やっぱり一番根幹である「行政の情報の出しかた」も、なるべくやさしい日本語で発信するといった努力には、さらに力を入れていかなくてはなりません。

外国人の方にとって、最も必要なものの1つは「情報保障」です。いつあなたは帰れるのか、どういう手段で帰れるのか、その見通しが立つのはいつなのか。これは外国人の方に限らずですが、皆さんが一番困る・不安になるのは、見通しが立たないことですから。

▶︎災害時多言語表示シート検索
自治体の国際化を支援する「CLAIR(クレア)」のホームページでは「災害時多言語表示シート検索」が利用可能です。避難所や避難場所でよく使われる言葉を14の言語に変換できるサイトで、スマートフォンからでも利用可能。
https://dis.clair.or.jp/open-data/dis-sheet/list/1

ADVICE VOICE

松川杏寧 准教授

1984年生まれ。同志社大学大学院社会学研究科で博士の学位取得後、人と防災未来センター、防災科学技術研究所を経て現職。

専門は犯罪社会学、福祉防災学。2011年の東日本大震災までは環境犯罪学による犯罪予防について研究していたが、3.11以降災害の分野へ。

地域住民による犯罪予防や災害時要配慮者の防災対策、避難所研究など、地域コミュニティや脆弱性の高い人々を主な研究の対象としている。