VOICE OF
(BOSAI) ACTION
過去の宿泊先支援者

QUESTION VOICE

民泊を利用した、防災など有事に向け新たなアクションを実行している人に、BOSAI VOICE制作チームが気になることを聞いていきます。

ADVICE VOICE

西村敏雄さん

「はまか」という宿泊施設の運営・宿泊運営代行・民泊清掃サービスなど、広く細やかに民泊ビジネスを経営する西村さん。運営代行をしている宿泊施設を含めると、東京都墨田区では130以上の民泊をおもに海外からの旅行者向けに提供しています。

「住宅の中にある家を貸す」が基本の民泊、地域への貢献・共存を考えているからこそ育めるもの、またそれゆえに有事における民泊利用でできることについて、考えを教えてくれました。

そもそも民泊のよさって?民泊を通じた地域への貢献って?

はまかの西村さんは、もともとご自身がバックパッカーでこれまで世界50ヶ国を旅してきたそうですね。実際にアメリカやシンガポールでAirbnb(エアビーエヌビー)を利用して実感した「ホテルにはない文化体験」をきっかけに、東京都墨田区で民泊事業をスタートしたとのこと。

海外旅行者に墨田区をはじめとした東京下町エリアの魅力を伝えることをはじめ、地域に貢献することに重きを置いていますが、そもそも「民泊ができる地域への貢献」にはどんなものがあるのでしょうか?

民泊とホテルとの大きな違いは、まず「住宅地の中に宿泊施設がある」ということ。必然的に宿泊施設の近隣のかたたちとの接点が濃くなりますから、交流はおのずと生まれやすくなります。地域の飲食店の店主に「最近、あの民泊のお客さん、よくきてくれるよ」と教えてもらうこともあります。民泊を利用するからこそできる画一的でない東京下町での文化体験、現地を知る体験ができます。もちろん大変なこともありますが、旅行者を地域“内”に迎え入れるからこそ、新しい出会いや交流も生まれます。

これは今後取り組んでいけたらと思っていることですが、地域に関わりたい人と地域が必要としていることとのマッチングです。たとえば、地元のお祭りでは、準備の人からみこしの担ぎ手まで人手が足りていないといったこともありますが、海外旅行者のかたには地域の伝統ある催しものに興味のある人もいますよね。そういった交流以上のものをつくっていくことにも働きかけていければと思っています。

地域の中に存在するからこそ、普段から心掛けていること、力を入れていることは?

前後左右に一般のかたが生活している住宅街に泊まるというのが民泊の醍醐味。それゆえ、同時に課題や問題も同時に出てきやすいといったことも聞きます。はまか・西村さんはそこに大してはどういったことを心掛けているのでしょうか。

海外旅行者を受け入れる民泊運用上でなにか問題や課題があれば、とにかく地域のかたと顔をあわせて何度も話していくことです。

細かいことですが、ゴミの捨てかたひとつもそうです。過去に起こった事例とその対策方法をしっかり対話していくことで、地域のかたと良い関係をつくっていく。地域のかたを信頼して、地域のかたにも信頼していただく。なにより対話が非常に大切だと思っています。

民泊を有事の際に利用することの利点は?

民泊を有事の際に利用することについては、どう考えますか?

民泊にはキッチンであったり洗濯機や乾燥機など、生活に必要なものがひととおりそろっている状況だというのは大きな利点になると思います。民泊は、泊まれるだけでなく、1人で、または他の誰かと、家族と「ともに生活できる」というのが前提にあります。

最近だと耐震もしっかりした建物が多いので、災害の際に利用
するという点で非常にマッチするといえます。有事の際に、たとえばお子さんがいるかた、プライベートを確保する必要があるかたへの環境を整えるのに一定以上の時間を要してしまうなかで、民泊を利用することで、そのあたりをスムースにできるといった貢献も見込めるとも考えています。

いま、運営を代行している宿泊施設のホストさん一人ひとりと「民泊を災害など有事に利用する」というアイデアについてを話して共有していますが、みなさんからポジティブな意見をいただきます。民泊をやるかたには少なからず「地域に貢献したい」「地域のなかでできることをしたい」という思いがあるからではないでしょうか。

これまで旅行者向けに民泊をやってきたからこそ、有事にできそうなこと

地域に貢献するという思いがある民泊。旅行者向けの民泊の運用を通して「町の人たちとの対話を重ねてきた・信頼を築いてきた」というのも、有事の際の活用を考えるにあたって、重要なベースになりそうです。

有事の際になって突如「この施設を有事の際に利用しよう」といった急ごしらえの対応とは異なるアプローチができそうですね。

私たちは、普段から海外のお客様対応で「24時間体制」ということをやっています。こういった、民泊事業の運営を通じて備えている体制からも、貢献できることはありそうです。災害時にその体制を組むのではなく、平時から24時間体制で動いているので、待ったなしの災害時に私たちがお手伝いできるところになるんじゃないかな、と。

はまかは、清掃のスタッフさんや業務委託のかたも含めると30、40名ぐらいのかたが墨田区に網のように点在して連携がとれる体制をとっています。ちょっとした支援の必要があれば、そこに迅速に対応するといったこともできるのではないかと考えています。

もう一つ大きな点としては、宿泊施設で避難生活を送るというだけでなく、地域で生活を送るという点です。その地域にお住まいのかたが前後ろ・両隣にいらっしゃるので、連携というか避難生活への協力体制というのも大きく関わってくるのではないでしょうか。

民泊で培ってきた経験・ネットワークが、有事で役立つポテンシャルを持っている。地域に貢献することを日頃から考えているからこそできることはあると思っています。特に先の見えない避難生活では、こういった心強さも重要かもしれません。

ADVICE VOICE

西村 敏雄 (株式会社はまか代表取締役)

幼少期から旅が好き。未知なる地、宿、人。刺激と感動を求め50カ国。
マーケティング職からの起業で、刺激と感動を提供する側に。現在は、東京都下町エリア、沖縄県今仁村で宿泊施設の運営を行う。